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漫画・小説・演劇・ドラマ、ジャンルも媒体も男も女も関係なく、腐った可愛そうな頭の人間が雑多に書き散らすネタ帳です。 ていうかあれだ。サイトに載せる前の繋ぎみたいな。

   
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黄豚@秘密の睦言2
「ね、シングルパー……」
「その呼び方止めろ!」
「いちいち叫ばないでくれる……アタマに響く……」
「……なんだ」

 ずっと腰を折ったままの体勢でいる角松の頬をもう一度両手で包む。

「アリガトな」
「なんのこ、」

 また、最後まで言わせずに、少し頭を浮かせて唇を塞ぐ。
 今度は、押し付けるだけではなく、合わせた唇の間から舌も押し入れて、深く。
 どうしようかと思案するようだった角松も、そろりと差し出してくる。優しくて、だけど深く。こんなキスも久しぶりだ。
 唇を離した。

「……あったまったか……?」
「ばーか……」

 まだ寒いっちゅーの。
 芯子は、両腕を角松の腰のベルトに回し、えい、と投げて自分の隣に転がした。

「うぉっ! おっまえどこにんな力が……」

 折っていた腰をさすりながら、狭いシングルベッドの上でそう呟いた角松が固まる。二人が密着して、少し幅が余る程度の広さしかないそこで、芯子がすり寄ったのだ。

「……いちろーさん」
「え」
「添い寝、して?」

 柔らかな身体がぴったりと角松に合わさって、外されたボタンの隙間から芯子の吐息が掛かった。
 硬直している角松の胸に縋るように、身を縮こませた芯子が、一つぶるりと震える。

「……」

 腕にその震えを感じた角松は、掛け布団を二人に掛かるように直すとそうっと芯子の身体を抱き寄せた。

「熱いな」
「アタシは寒ぃの」
「……今だけだ」
「ん……」
「寝ちまえ、もう」
「……おきるまで、放さないでて」
「わーかったから」

 言葉と同時に少し強く抱きしめられて、速く脈打つ角松の心臓の音を聴きながら芯子は目を閉じた。

(今だけだ)

 寒いのも、温もりが欲しいと思うのも、誰でもない角松一郎に抱きしめていて欲しいのも、今だけ。
 ただ、弱ってる時に傍にいたから、縋ってるだけ。治ったら、今この時を忘れるって約束するから、だから。

 -芯子さん、好きです-

(今、この間だけ、)

 真摯な告白を、芯子は今だけ頭からそっと追いやって、寒さごと包んでくれるひどく優しく暖かな腕の中、芯子は微睡み、寝息を立てた。

 角松は、穏やかに寝入る芯子の髪を撫でて思案するようにじっとその女を見つめた。
 朝から体調を崩しているのはわかっていた。覇気がなかったし、いつも以上に集中力も欠けていた。まさか、いきなり倒れるとは思わなかったが、調査にも連れ出して無理をさせたとも思う。ただ、ふとした瞬間に何かを思い詰めたように遠くなる視線を、どうしても見ていられなかったのだ。
 自分は二人には関係ないと頭では理解しているのに、工藤優の告白はあまりに衝撃的だった。あれから角松の睡眠時間も削られている。『洋子』相手なら素直になれるのに『堤芯子』だと思うとどうにも見栄を張ってしまう。まるで子供だ。

「……芯子」

 今だけだと角松は縋る芯子にそう言ったが、その言葉は、自分に向けた言葉でもある。コイツが素直に俺に縋るのは、きっと今だけ。
 ……芯子が寝ている今なら、俺も素直になれるだろうか。

「……俺さ、騙されても、馬鹿にされても、」

 意識が薄れて、自分も寝そうだ。久しぶりにいい夢が見られるだろうか。
 角松は、唇を芯子の耳に寄せる。

「……やっぱお前のこと、好きだわ」

 『ん~マジで?』そんな反応一つ返らない、独白めいた告白。
 これはただの自己満足で、云うつもりのない角松の秘密。
 そして、云われなければ知るつもりのない、芯子の秘密。


 起きればいつもの通り、変わらない二人が在る筈で、だから、今だけ。
 合い言葉のように心でなぞると、二人は互いに、いい夢を、と願うのだった。
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